2005年8月26日、歴史に名を残すであろうエロゲーが発売された。強気っ娘に特化したゲームとしてかねてより注目されていた『つよきす』である。『姉しよ』からのいわゆるMゲーの流れを汲んではいるが、この作品のテーマはもちろん「ツンデレ」だ。この属性は、新旧問わず好まれるものである。まあ実際、蓋を開けてみれば、ハッキリとツンデレと呼べるのは2人ほどだったが、それでも分類上は全体的にツンデレキャラばかりであると言えると考える。この根拠についでは後で述べるが、とりあえずあちこちの店で売り切れになっているほどの人気らしい。また、この作品に限らず、ツンデレ属性を持つキャラを含む漫画やゲームは、それらのレビューにおいてかなり熱の篭ったテンションである場合が多いと感じる。少し前にはVIP板でもツンデレスレが流行ったし、金髪ツインテール=ツンデレという方程式はいまだ根強い。どうして、ツンデレは僕らの心を、ここまで掴んで放さないのか。尚、タイトルで「僕らの」と言ってるけど自分はそんなこたーない、なんて生まれつき亭主関白派な人は、「僕らの」の部分を「ちょっと弱気なヲタは」と読み替えてもらっても、一向に差し支えない。
さて、さっそく検証に入っていこうと思うが、ところで実は今回はいつもと勝手が違う。いつもだったら、ツンデレキャラの起源を探し、その発展と変容の経過を追うことで考察していくところだが、今回ばかりはちょっと違う。実のところ、少年漫画やアニメ、恋愛ゲームなどでのツンデレの走りを探ることには、あまり意味が無いのだ。本来なら、先ほども述べたように、金髪ツインテール=ツンデレ、とか、ツリ目黒髪ストレート=ツンデレ、とか、お嬢様キャラとの恋→ツンデレ、などといった方程式が重要になるところであり、ちなみに金髪ツインテールといえば、ちょっと昔だと『君望』の大道寺あゆ、最近だと『パルフェ(ショコラ2)」のカトレア、という風であなる。この彼女らへの熱い想いの丈は、グーグル検索して読んでもらうとして、じゃあなんでそれを省くのかと言うと、ツンデレは実はもっと昔からあったと考えられるからである。
ここで、ツンデレの定義について確かめておきたい。まず、ツンデレには大きく分けて二つのパターンがある。一つは前回の考察で省いた「幼なじみでツンデレ」である。小さい頃からの長い付き合いで、異性として意識せず仲がよかった頃の二人の距離のまま大人になり、互いに恋愛感情に素直になれなくて喧嘩した状態からやり直す、という例のパターンがこれだ。幼なじみネタのストーリーの三割がこれであると思う。青春群像モノの醍醐味であり、これがなくてはドタバタラブコメディの意味が無い。そして、もう一つは「いきなり喧嘩するツンデレ」である。食パン咥えて出会い頭に衝突したら初対面なのに喧嘩し、別れてから数時間後に運命的な再会を果たしたら喧嘩し、次の日に普通に会ったら名前も知らないまま理由もなく喧嘩する、いわゆる「小学生の恋愛」を中学生以上がやる例のパターンである。恋愛ゲームなどで、幼なじみキャラが尽くすタイプや引っ込み思案なタイプだった場合、二番手や三番手はだいたいこれになる。友人キャラ連中から煽られるだけで必要以上に相手を罵り、二人っきりになったら意味もなく言い争い食べ争い、イレギュラーな異性に掠め取られそうになると親の仇のごとく闘志を燃やす。そして、このどちらのタイプも、いざひとたび垣根を越えてしまえば、明らかに砂糖の量を間違ったケーキのような甘い甘い関係が待っている。最近の若いもんはええのう、本当に。
と、いったところで、ここからが本題である。上記の様に、喧嘩していた相手を好きになるのは、何だかんだ言って昔からよくあるストーリーである。サイアクの印象から始まり、喧嘩をしながら相手のことを深く知るようになって、知らない間に相手の事をとんでもなく好きになっている―――このパターン、そもそも、80年代前後の少女漫画の流行ではないのか。社会での女性進出の流れに乗って、少女の強気なキャラを前面に出した漫画が売れるようになり、そこで描かれたのはまさに「喧嘩から始まる恋愛物語」であった。強気な女の子の相手には喧嘩相手となる強気な男の子がよく似合っており、その風潮は男性向け恋愛ゲームでのそれとまではいかないが、現代の少女漫画にもけっこう残っている。男性向けの恋愛主体となる漫画やアニメは、女性向けのそれらよりもブームとなるのが遅れており、男性向けの恋愛ストーリーを作ろうとした当時の作家らが、女性向けのそれからキャラクターを参考にしたと考えても何も不自然では無い。先ほど述べた「ちょっと弱気な云々」は、その意味での男性キャラ側への憧れであると、一応考えられる。ツンデレの本当の意味での走りは、つまりはそういうことである。……と、私は考える。
ツンデレの醍醐味の一つ、それは、ストーリーを客観的に見ている読者は、二人が喧嘩をする必要など無いことをあからさまに分かっている点である。その意味で、冒頭の『つよきす』はツンデレ色がそれなりに強い。恋愛感情に素直になれず喧嘩している事実、それを知らないでいるのは当人たちだけであり、読者はどっちの気持ちもよく分かっている。だから、やきもきする―――。つまりは、あの頃の少女漫画の主人公に共感していた読者の様に、男性向けになってもツンデレキャラの心の揺れ方は大きいお兄さんの心に直接響くわけである。まとめると、ツンデレの良さとは、ひとことで言ってしまえば「わかりやすさ」である。だから、上記のような方程式も、わかりやすさの意味でプラスになっており、といったわけで、前回書き忘れたのと含め、今後は『メイド喫茶』だけではなく、『幼なじみ喫茶』や『ツンデレ喫茶』が流行るんじゃないですか、むしろ流行らして下さい、と声高にわがまま言ったところで、今晩はおやすみなさい。
管理人。