キャラクターにはプロフィールというやつがある。名前と性別から始まって、身長体重や胸囲胴回り腰回り、大まかな性格や過去の遍歴、キャラ相互の関係など様々。そんな中に、プロフィールとしては考えてみるとなんだか不思議なものが入っていることが結構ある。例えば、そのキャラクターが、ストーリーとはあまり関係なく良く食べる好物だ。たいやきにプリンにホットケーキ、ちょっと重めにやきそばラーメンハンバーグ、果ては未成年なのに酒好き、といったものまであり、ギャグ指向の世界観だったら四次元の胃袋を持つツワモノすら珍しくない。まあおよそ誰かの好物たりえるものだったらどれかのキャラが持っていると考えて間違いないと思うが、しかし正味の話、そういうのは人物と言う意味では言うほど意味を持たない筈だ。好きな食べ物そのものがストーリーに深く関わってくることは稀であるにも拘らず、なんだかそういったものを前に前にと押し出してキャラクターを魅せようとしている気がする。普通、異性を見て好みかどうかを判断する時に、胸の大きさは気にしても、チョコレートケーキを週に三回食べてるかは気にしない。むしろ、見ているだけで胸焼けしそうなくらいの大食い少女は、想像の中でもなければだいたい犬猿される。なのに、美少女ゲームやその他女の子キャラを押してくるアニメ・マンガでは、たいてい「好きな食べ物」が、たとえ本編に一度たりとも登場しなくても、キッチリと設定されていたり、複数の女の子キャラの中の一人は極端に食い意地が張っている、ようなことが少なくない。
こんな感じで、萌えとして作られるキャラクターの自己主張は、現実のそういうのと比べて(似ていてもいいはずなのに)いろいろ違っていることがある。他にもこういうのがある。その手の世界は数年前からネコも杓子も制服ブームで、学園の制服、ナース服、魔法少女のコスチュームなど、その多様化は進む一方だ。学園モノのゲームだと、制服がそのゲームの『顔』、と言っても過言ではなく、そのセンスも常に進化している。しかし、その一方で、その彼女らがひとたび制服を脱ぐと、なんだか地味で安物にしか見えないような私服を着て主人公の前に現れる。制服の派手さに反比例して、それ以外の服がどうにも貧相なのだ。こんなのを着て街に出たら、センスないを通り越して田舎者だというのがやたらとある印象が拭えない。これは一応、数年前の話であり、ここ一、二年だと少しは解消されてきていると思うのだが、それまでは地味な私服がまかり通っていた。確かに考えてみれば、学園モノだったら私服の出番は少ないからテキトーに作られていたり、制服が派手で更に私服も複雑だと手間がかかる、などといった理由もあるにはあるのだろうが、それでも対して頓着もされずに「私服は地味でいい」だった。
と、いうわけで、唐突だが今回のタイトルに論題を移す。エロゲーは、なぜエロゲーなのか。もちろん、大きなお兄さんの寂しい夜のためにあるのは違いないのだが、皆さんもお分かりの通り、エロゲーにはエロ目的とはちょっと呼べない派閥が大勢力としてある。同人ブームの火付け役になった泣きゲーや、そこから派生した萌え中心ゲーム、あるいは以前ここでも取り上げた猟奇ゲームや伝奇モノがそれだ。ハッキリ言って、これらのジャンルのものはHシーン目的では買わない。それ目的だったらそれ中心のゲームがいくらでもある。しかし、確かにそのジャンルは売れ行き好調という話を良く聞く。それでもHシーンはキャラへの感情移入に必須だとも考えられたが、しかし、最近のファミ通で特集が組まれるほど、PCでヒットしたエロゲーがコンシューマ機に移植されるケースが多々見受けられるわけだ。では、実際問題として、エロゲーはなぜエロゲーなのか。Hシーンはいまいち必要なさそうな気がするのに、ヒットするにはHシーンは必須、という現象は、いったいどういうことなのか。
ぶっちゃけていうと、私自身、シナリオ重視のゲームの場合、その手のシーンの半分以上に於いてCtrlキーに手が伸びる。ライターの人がそれなりに上手ければ別だが、本当にオマケ程度に手抜きのものとしか捉えられないような佳作ゲームも、やはり珍しくない。しかし、じゃあ始めからHシーンが要らないかというと、正直それはちょっとゴメンだとワガママな気分になる。こういう私みたいなものはやはり珍しいかもしれないが、それでも感動や萌えを目的にエロゲーを買った人は、それらのシーンでは右手にマウスを持ったままテキストを進めることが多いと思う。そういうわけなので、エロ目的で変われるエロゲーはエロゲーでいいのだが、そうではないエロゲーはなぜエロゲーなのか、その鍵は、市場の注目度や客層の熱中度から、
エロゲー ≧ 美少女ゲーム・萌えアニメ・マンガ > その他の普通の女の子が出てくるメディア
という順番であると仮定して、オタらが何を求めて自分の好みの萌えキャラを選ぶのかを考察してみる。
さて、といったわけで、上の方の話が関係してくる。二次元上の女の子キャラへの嗜好として、普通とは違った面は上記のようであることがわかった。つまり、萌えキャラ特徴は、普通と違って、食べ物への欲望には実に素直で、制服は可愛いものを選んでも私服には頓着しないわけである。そして、エロゲーに出てくる女の子キャラの特徴は、これこそ何をいわんや、処女なのにファンタジーと言っていいくらいHなことに積極的で、SFと言っていいくらいいきなりで体が素直なのである。こういうのが男子全員の理想、と言ってしまえばなんつーか話は終わりなのだが、せっかくなので、上の話と絡めた私の説も聞いてもらいたい。
好物に素直で、普段着はわりとどうでも良く、性欲は赴くままにぶつけてしまえる。―――さて、こういう存在、実はもの凄く身近にいたりしないだろうか? 反感を恐れずに言うと、それは、エロゲーをやっているオタら本人、である。誰しも好きな食べ物に対して「これすごく好きだなあ」と感じたことがあるのは当たり前として、普段着は別に地味なものでもいいやというオタにとって街中を行くオシャレな女性は眩しすぎ、いざという時にベッドの上で―――いや、これは省くことにしよう、なんだか泣けてくる。
そういうわけで結論である。萌えキャラというのは、全ての面に於いて女の子女の子していればいいわけではなく、部分的には男の側に共感できる要素があったほうがいい、ということがわかったわけだ。故に、エロゲーはエロゲーなのである。あまり調査してないのだが、いや調査する気はないのだが、これは多分、婦女子向けのその手のものでも同じなのだろう。萌えキャラとは、一部はその反対の性をもつものである。世の中のモテる男や女というのも、よくはわかんないけど、上記で示した要素と多少違いこそすれ、自分の感覚を無意識に相手に共有させられる才能を持っているのだろうと考える。まあ、なんだかんだ言って、甘いケーキを幸せそうに食べている女の子キャラは可愛いことに間違いないわけで、今回の話が何だかよく分からなかった人は、分からないままでもおそらく構わないです、と言ったところで、またいずれ。
管理人。